【大規模モデル】Synology NASのオススメ機種は?比較表を元に徹底解説!!

「人数が増えて動作が重くなってきた」「TBクラスのデータを安全に保管したい」。そんな大規模環境の悩みを解決するのが、SynologyのハイエンドNASです。でも、種類が多すぎてどれが最適解かわかりにくいですよね。
この記事では、プロが選ぶおすすめの大規模向け機種をランキング形式でご紹介!違いが一目でわかる比較表とあわせて、スペックの読み解き方から徹底解説していきます。
デスクトップ型とラック型の違いについて
まずNASを選ぶときには、デスクトップ型とラック型のどちらか選ぶ必要があります。
それぞれ以下のような特徴を持ちます。
デスクトップ型のNASとは?

デスクトップ型NASとは、机や棚の上に設置できる小型ストレージサーバーのことで、ネットワークを介してファイル共有やバックアップが行える装置です。Synologyのデスクトップ型NASは静音性が高く、電源を入れるだけで利用できる手軽さが特徴。専門知識がなくてもブラウザから操作でき、クラウド連携や写真整理、PC・スマホの自動バックアップにも対応しています。SOHO、小規模オフィス、クリエイター、家庭利用など幅広いシーンで活躍し、ストレージの拡張やSSDキャッシュ追加による性能強化も可能です。
ラック型のNASとは?

ラック型NASとは、サーバールームや19インチラックに収納して運用する業務向けストレージサーバーです。Synologyのラック型NASは、高耐久設計、拡張性の高さ、冗長電源や高速ネットワーク(10GbE/25GbE)対応など、企業システムに求められる安定性と性能を備えています。大量データの保存、仮想化、映像制作、監視カメラ録画、バックアップ基盤など、24時間安定稼働が求められる環境に最適です。デスクトップ型よりスケーラブルで、拡張ユニットやSSDキャッシュにより成長規模に合わせたストレージ運用が可能です。
| 比較項目 | デスクトップ型 | ラック型 |
|---|---|---|
| 静音設計 | ◎ 静か | △ 多少動作音あり |
| 拡張性 | 〇 機種による | ◎ 拡張ユニット高速NIC対応 |
| 冗長電源 | ✕ なし(基本) | ◎ 搭載モデルあり |
| 10GbE対応 | 〇 中~上位モデル対応 | ◎ 標準 or 拡張スロット前提 |
| スケール | 小〜中規模向け | 中〜大規模・業務システム向け |
Synology DSシリーズの比較表
SynologyのDSシリーズは、デスクトップ型NASラインとして設計されたモデルで、家庭利用からSOHO、中小企業まで幅広い用途に対応します。静音性・省電力性に優れ、セットアップが簡単なことが特徴です。写真・動画・ドキュメント管理、クラウド連携、バックアップ、リモートアクセスなど多機能で、用途に応じて2〜12ベイまで選択でき、将来の拡張にも対応しています。
| 商品名 | DS725+ | DS425+ | DS1621+ | DS1825+ | DS2422+ |
|---|---|---|---|---|---|
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | |
| 購入する | 購入する | 購入する | 購入する | 購入する | |
| ベイ数 | 2ベイ | 4ベイ | 6ベイ | 8ベイ | 12ベイ |
| CPU | AMD Ryzen R1600 2.6 GHz | クアッドコア | AMD Ryzen クアッドコア | AMD Ryzen™ | AMD Ryzen™ |
| メモリ (標準 / 最大) | 4GB / 最大拡張可 | 4GB / 最大拡張可 | 4GB /最大32GBまで | 8GB ECC / 32GBまで | 4GB ECC / 32GBまで |
| ネットワーク | 2.5GbE ×2 | 2.5GbE ×2 | 4x1GbE RJ-45 | 2.5GbE ×2 / 10GbE/25GbE対応 | 10GbE /25GbE対応(アドオン) |
| 拡張機能 | NVMe SSDキャッシュ対応 | NVMe SSDキャッシュ対応 | NVMe SSDキャッシュ / DX517対応 | NVMe SSDキャッシュ / DX517対応 | 拡張ユニット対応 / SSDキャッシュ対応 |
| 主な用途 | SOHO / PCバックアップ / ファイル共有 | 中小企業・クリエイター向けファイル管理 | 中小企業・クリエイター・仮想化・大容量運用 | 中規模企業・監視・仮想化・大容量運用 | 大規模企業・データセンター・アーカイブ用途 |
Synology RSシリーズの比較表
SynologyのRSシリーズは、ラックマウント型NASとして設計された企業向けラインで、サーバールームや19インチラック環境での運用を前提としたモデルです。高い拡張性、耐久性、冗長化設計に対応し、10GbEなど高速ネットワークにも最適化されています。大量データの運用、仮想化、映像制作、監視、バックアップ基盤など、ビジネスの中核ストレージとして利用できます
| 商品名 | RS1619xs+ | RS1221+ | RS822+ | RS3618xs | RS3621xs+ | RS4021xs+ | RS2825RP+ | RS2423+ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() | ![]() | |||||||
| ベイ数 | 4ベイ | 8ベイ | 4ベイ | 12ベイ | 12ベイ | 16ベイ | 16ベイ | 12ベイ |
| CPUタイプ | Intel Xeon D-1527(4コア) | AMD Ryzen V1500B(4コア) | AMD Ryzen V1500B(4コア) | Intel Xeon D-1521(4コア) | Intel Xeon D-1531(6コア) | Intel Xeon D-1541(8コア) | Intel Atom / Ryzen 系 | AMD Ryzen V1780B(4コア) |
| メモリ(標準/最大) | 8GB ECC / 32GB | 4GB ECC / 32GB | 2GB ECC / 32GB | 8GB ECC / 64GB | 8GB ECC / 64GB | 16GB ECC / 64GB | 4–8GB / 拡張可 | 8GB ECC / 32GB |
| ネットワークポート | 1GbE ×4(10GbE拡張可) | 1GbE ×4 | 1GbE ×4(10GbEオプション) | 1GbE ×4(10GbE拡張可) | 1GbE ×4 + 10GbE ×2 | 1GbE ×4 + 10GbE ×2 | 1GbE ×4(10GbE拡張可) | 1GbE ×4(10GbE拡張可) |
| 推奨用途 | 小規模ラック・仮想環境 | 中小企業・オンプレ共有 | 支社・拠点NAS/クラウド同期 | 大容量ファイル管理 | 大規模運用・仮想化・基幹システム | 企業基盤・映像制作・高負荷環境 | 冗長電源・大規模バックアップ | 高速共有・容量拡張・チームNAS |
使い道に応じたオススメ機種
大学内ファイルサーバー / データ共有の運用を想定した例

【業種】
教育機関(大学 情報基盤センター / 全学システム)
【課題】
・クラウドストレージ(Google/Microsoft)の教育機関向け契約改定により、クラウドの維持コストが数千万円規模で跳ね上がってしまった。
・学生・教職員あわせて数千人規模のアカウント管理が必要だが、各学部でサーバーが乱立しており、セキュリティ統制(ガバナンス)が効いていない。
・クラウド上のデータも「責任共有モデル」に基づき大学側でバックアップを取る必要があるが、その受け皿がない。
【運用状態】
利用人数: 約 5,500名(学生 5,000名、教職員 500名)
【用途】
「学内Box/Dropbox」の代替: 全ユーザーへの個人フォルダ(Synology Drive)提供。
クラウドのバックアップ: Microsoft 365 / Google Workspace データの保全。
学生クォータ: 1人 20GB × 5,000名 = 100TB
教職員クォータ: 1人 200GB × 500名 = 100TB
システムバックアップ・共有領域: 約 50TB
▶総データ量: 100TB + 100TB + 50TB = 250TB
推奨モデル
Synology SA3610 × 2台 (※High Availability構成) + 拡張ユニット RX1222sas × 2台
HDD構成案
構成: 本体12ベイ + 拡張12ベイ = 合計24ベイ(を2セット用意し二重化)
HDD: 16TB SAS HDD (Enterprise用) × 24本
RAID: RAID 60(12本ごとのRAID 6をストライピング)
容量: 物理 384TB → 約 300TB(実効容量)
選定理由
- SA(Scalable Architecture)シリーズの採用: 一般的なNASと異なり、最大96ドライブ(1.7ペタバイト以上)まで拡張可能なエンタープライズモデルです。入学者が増えても、本体を買い替えずに拡張ユニットを足すだけで容量を増やせます。
- SHA(Synology High Availability)による完全二重化: 全学のインフラとなるため、サーバーダウンは許されません。同じ構成のサーバーを2台用意し、1台が故障しても自動的にもう1台に切り替わり、授業や業務を止めない構成にします。
- ライセンスフリーのプライベートクラウド: 付属機能の「Synology Drive」を使えば、ユーザー数無制限でブラウザやスマホからアクセスできるファイル共有環境が作れます。クラウドサービスのような「月額×人数分」のコストが発生しません。
- SAS HDDの信頼性: SATA接続よりも高速で信頼性の高い「SAS接続」のHDDに対応しており、数千人からの同時アクセスリクエスト(I/O)を効率よく処理できます。
監視カメラの録画サーバの運用を想定した例

【業種】
物流・運送業(中規模倉庫)
【課題】
荷物の破損や紛失があった際、いつ、誰が、どこで扱ったかを確認したい。
外部の警備会社のシステムは月額コストが高く、録画保存期間が「1週間」と短いのが不満。
【運用状態】
監視カメラ:8台
解像度: フルHD(1080p / 1920×1080)
圧縮形式: H.265
録画方式: 24時間 連続録画
保存期間:30日間
1台あたりの1日のデータ量: 約 25GB ~ 30GB
8台分の1日のデータ量: 30GB × 8台 = 240GB / 日
30日間の総データ量: 240GB × 30日 = 7,200GB(約7.2TB)
▶7.2TB の実効容量が必要
推奨モデル
Synology DiskStation DS423+ (または DS923+)
HDD構成案
合計容量: 12TB(物理) → 約 8TB(実効容量)
HDD:4TB HDD × 3本 (RAID 5 構成)
選定理由
- 4ベイモデル: 2ベイだと、RAIDを組んだ際に容量単価の高いHDDが必要になり、将来カメラを増やした際に容量不足になります。4ベイなら安価なHDDを複数組み合わせて大容量を作れます。
- Synology Surveillance Station対応: 業界標準の使いやすい監視ソフトが無料で使えます(※カメラライセンスは追加購入が必要)。
大手建設会社(全国規模)の運用を想定した例

【業種】
全国展開の建設業
【課題】
・全国50箇所の支店・営業所に小さなNASを置いているが、バックアップが現地任せで管理できていない。
。ランサムウェア被害に遭った際、各支店のデータが全滅するリスクがある。
。本部で一括して全支店のデータを吸い上げ、長期保管(5年〜10年)したい。
【運用状態】
拠点数: 本社 + 全国50拠点
データフロー: 夜間に各拠点から差分データを本社へ転送
総データ量: 50拠点 × 10TB = 500TB以上
保存期間: 過去バージョンも含めてペタバイト(PB)クラス
▶ ペタバイト級の超高密度サーバーが必要
推奨モデル
推奨モデル Synology HD6500 (高密度・大容量モデル)
HDD構成案
本体: 4Uサイズで 60本 のHDDを搭載可能
HDD: 18TB SAS HDD × 60本
実効容量: 約 800TB (1台で約1PB近くまで拡張可能)
選定理由
- 圧倒的な収容力: 通常のラックサーバー5台分の容量を、わずか1台(4Uサイズ)に集約できます。データセンターのラック借用コスト(スペース代)を劇的に削減できるため。
- イミュータブル(不変)スナップショット: 設定した期間(例:90日間)は、管理者権限があってもデータを削除・変更できなくする機能(WORM)を使用し、ランサムウェア対策もできるため
まとめ
大規模環境におけるSynology NASの導入は、単なるデータ保存場所の確保以上に、組織全体の業務効率やデータの安全性を左右する重要な投資です。
本記事の比較表で解説した通り、CPU性能やキャッシュの有無、そして10GbEネットワークへの対応は、多人数での同時アクセス時の快適さに直結します。目先の導入コストも大切ですが、数年先のデータ増加や利用人数の拡大を見越して、拡張ユニット対応などの「余裕のあるモデル」を選ぶことが、結果として長期的な運用コストの削減と安定稼働につながります。
ぜひ自社の環境に最適なハイエンドモデルを選定し、ストレスのない高速で堅牢なデータ共有環境を構築してください。






