NVMeをバックアップデバイスとして活用できるか?LTO9と比較検証!

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NVMeをバックアップデバイスとして活用できるか?LTO9と比較検証!

データのバックアップは、ビジネス継続性において最も重要な要素の一つです。従来、大容量データの長期保存にはLTOテープが広く利用されてきましたが、近年、SSD、特にNVMeデバイスの性能向上と価格競争により、新たなバックアップソリューションとしての可能性が注目されています。

本記事では、このNVMeデバイスをバックアップ用途として実用できるのかを検証し、従来のLTO9テープソリューションと比較しながら、コスト、性能、運用面でのメリット・デメリットを徹底的に掘り下げていきます。

LTO9とNVMe、それぞれの特性

まずは、比較対象となるLTO9とNVMeデバイスの主な特性と、バックアップにおけるメリット・デメリットを整理しましょう。

LTO9 テープソリューション

  • ドライブ単価: HPE P84142-B25 LTO9 外付ドライブ 約115万円 (LTO9テープ5本付属、非圧縮18TB/本)
  • HBAコントローラ: 約10万円
  • 追加テープ単価: 約2.5万円(非圧縮18TB)
  • メリット:
    • 大容量時のコストパフォーマンス: ドライブとHBAの初期投資はかかりますが、大容量になるほどテープ単価が安価なため、総容量が増えるにつれてコスト効率が向上します。特に、今回のLTO9製品はテープ5本が付属するため、中容量まではさらにコストメリットが見込めます。
    • 長期保存性と信頼性: テープメディアは設計寿命が長く、オフライン保管(エアギャップ)により物理的なセキュリティが高まります。
    • 実績と信頼性: 長年の運用実績があり、企業のアーカイブや災害復旧の標準として確立されています。
  • デメリット:
    • 初期投資の高さ: ドライブ本体とHBAが高価なため、導入にはまとまった資金が必要です。
    • ハードウェア要件: サーバー側に専用のHBA(Host Bus Adapter)が必要となります。
    • アクセス特性: シーケンシャルアクセスに特化しており、細かいファイルのランダムな書き込み・読み込みには不向きです。
    • 専用ソフトウェア: バックアップ/リストアには専用のソフトウェアが必要となることが一般的です。
    • ドライブ故障のリスク: テープドライブはメカニカルな機構を持つため、定期的なメンテナンスや故障のリスクも考慮する必要があります。

NVMe SSD (USB変換利用)

  • 変換デバイス (ICY DOCK MB931U-1VB R1): 約2.5万円
  • NVMe SSD (7.68TBクラス): 約16.8万円
  • メリット:
    • 高速転送: NVMe本来の圧倒的な転送速度により、大容量のデータバックアップも短時間で完了できます。バックアップ時間の短縮は、RPO(目標復旧時点)の改善に直結します。
    • 手軽な接続性: 今回のようなUSB変換デバイスを利用すれば、汎用的なUSBポートで手軽に接続・運用が可能です。
    • ランダムアクセス性能: 細かいファイル群のバックアップや、特定のファイルのみをリストアする際に高速なアクセスが可能です。
    • ホットスワップ性: NVMeはホットスワップに対応しているため、運用中の交換や増設も容易です。
  • デメリット:
    • 容量あたりのコスト: 大容量を確保しようとすると、NVMe SSD自体の単価が高いため、トータルコストがLTOと比較して高くなる傾向があります。
    • 長期オフライン保存: SSDは磁気テープと異なり、電源がない状態での長期保存には向いていません(データ保持期間に限りがあるため)。
    • 物理的制約 (U.2/U.3の場合): サーバー内部にU.2/U.3デバイスとして搭載する場合、バックプレーンや専用ケーブルが必要となり、汎用性が低い。また、変換デバイスも種類は非常に少ないため、簡単に内部データを確認することができない。

NVMeをUSB変換で利用する検証

NVMeドライブをバックアップ用途で活用する際の一つの課題は、その接続性です。U.2/U.3規格のNVMeデバイスは、その物理的なデザインは2.5インチデバイスのため、サーバーのバックプレーンへの搭載は可能です。しかし、バックプレーン側と専用ケーブルがセットである必要があり、どちらかが欠けるとNVMeデバイスは認識できません。

また、NVMeはデバイス自体は高速です。そのため、大容量のデータバックアップも時間がかかりません。

そこで今回、私たちはNVMe SSDを汎用的なUSB Type-Cで接続可能にする変換デバイス「ICY DOCK MB931U-1VB R1」に着目しました。

USB-C 3.2 Gen 2 (Thunderbolt 4対応)なので幅広く利用可能。

USB-Aへケーブル変換で認識も可能。(スピードは落ちます)

バスパワーではなく、ACアダプタにて通電です。


● 大容量 7.68TB!

● 超高速 PCI-E Gen5.0 U.2 2.5インチ 15mm サイズ

● シーケンシャル帯域幅:リード 14,800MB/s ライト 10,000MB/s

● 販売価格 ¥168,000(複数台まとめ購入は価格調整致します!)

このデバイスを使用し、PRIMERGY TX1310M5(フロントにUSB TYPE-C Gen3.2 x2 ポートを搭載)にWindows Server 2025をインストールした環境で7.68TBのNVMeを装着し、動作検証を実施。結果、問題なく認識され、高速なデータ転送が可能であることを確認しました。

この結果は、NVMeを外付けバックアップデバイスとして、手軽かつ高速に利用できる可能性を示唆しています。

バックアップ容量別コスト比較

それでは、LTO9とUSB変換NVMeソリューションで、具体的なバックアップ容量に応じた総コストを比較してみましょう。

前提条件:

  • LTO9ドライブ単価:1,150,000円(HPE P84142-B25 LTO9 外付、テープ5本付属)
  • HBAコントローラ単価:100,000円
  • LTO9追加テープ単価:25,000円(非圧縮18TB)
  • NVMe変換デバイス単価:25,000円(ICY DOCK MB931U-1VB R1、1台)
  • NVMe SSD単価:168,000円(7.68TBクラスのNVMe SSD)
  • LTO、NVMeともに、必要容量に合わせてデバイスを複数購入すると仮定します(変換デバイスは1台で使い回し)。
容量LTO9 テープソリューション (総コスト)USB変換NVMeソリューション (総コスト)備考
20TB1,250,000円529,000円(LTO:ドライブ+HBA費用のみ。付属テープ5本で十分 / NVMe:変換1台+デバイス 3枚)
50TB1,250,000円1,201,000円(LTO:ドライブ+HBA費用のみ。付属テープ5本で十分 / NVMe:変換1台+デバイス 7枚)
100TB1,275,000円2,377,000円(LTO:ドライブ+HBA+追加テープ1本 / NVMe:変換1台+デバイス 14枚)

比較表からわかること:

  • 小容量(20TB程度)の場合: NVMeソリューションの方が、ドライブやHBAの初期投資が不要な分、圧倒的に安価です。高速性も考慮すると、手軽なバックアップに非常に魅力的です。
  • 中容量(50TB程度)の場合: コストは非常に拮抗しています。LTO9の付属テープ5本(合計90TB)で十分に容量を賄えるため、追加テープ費用がかからず、LTOの初期投資の割合が大きくなります。この容量帯では、速度や運用性(オフライン保管の要否など)で選択が分かれるでしょう。
  • 大容量(100TB以上)の場合: LTOソリューションが依然としてコストパフォーマンスに優位性を見せます。付属テープだけでは賄いきれないものの、追加テープ1本で100TBをカバーできるため、LTOドライブの初期投資が相対的に小さくなり、NVMe SSDを複数購入するよりも総コストを抑えられます。

まとめと考察

今回の検証により、NVMeをUSB変換デバイスを介してバックアップデバイスとして活用する手法は、特に50TB程度までのデータ容量であれば、コストと速度の両面でLTO9に対する有力な選択肢となり得ることが明らかになりました。

NVMeが特に適しているケース:

  • 高速なバックアップ/リストアが必須で、RTO/RPO要件が厳しい場合。
  • 比較的小規模なデータセンターやオフィス環境で、手軽に高速バックアップ環境を構築したい場合。
  • ファイルのランダムアクセス性能が重視される場合(特定のファイルを頻繁にリストアする可能性があるなど)。
  • テープの物理的な管理やHBAの導入・設定といった手間を省きたい場合。
  • NVMe 単体では認識できるデバイスは僅少ですので、簡単に内部データを確認することができません。

一方で、LTO9は依然として大容量データの長期保存、特にオフライン保管による災害対策やアーカイブ用途において、その信頼性とコスト効率の高さで優位性を保ちます。特に、今回比較した製品のようにLTOドライブに多数のテープが付属している場合、中容量帯でもNVMeと十分に競合し、100TBを超えるような超大容量のバックアップでは、LTOの容量あたりのコスト優位性が際立ちます。

最終的な選択は、バックアップするデータ量、要求される速度、予算、運用体制、そして災害対策の要件など、多角的な視点から検討する必要があります。NVMeを外付けバックアップデバイスとして利用する選択肢が加わったことで、より柔軟で多様なバックアップ戦略を検討できるようになったと言えるでしょう。

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